頑張るより緩める 夏を乗り切る呼吸筋ストレッチ

「夏は暑いから仕方ない。でも、自分の体は整えられると思うんです。」
そう話す林田麻佑さんの言葉が、取材を終えた今も印象に残っている。
呼吸筋ストレッチ講師として活動する林田さんは、「不調をなくしましょう」とは言わない。
何度も口にしたのは、「不調や不安を長引かせない」という考え方だった。
近年は暑さも年々厳しくなり、気候や情報量の多さ、人間関係など、自分ではどうにもできないストレスに囲まれて暮らしている。
それでも、その環境を変えることは難しい。
だからこそ大切なのは、自分自身を整えること。
インタビューを通して感じたのは、林田さんが伝えたいのは呼吸法そのものではなく、「元の自分へ戻る力」なのだということだった。
夫の一言が、呼吸と向き合うきっかけになった

林田さんが呼吸筋ストレッチと出会うきっかけは、ご主人の何気ない一言だった。
整骨院で患者さんの体を診ているご主人から、「年齢のわりにむせるよね。呼吸に問題があるんじゃない?」と言われたという。
最初は驚いたものの、思い返せば心当たりはたくさんあった。
大学受験時に過呼吸を経験し、カラオケでは「蚊が鳴くような声」と言われることも多かった。
「そうかもしれない。」
その一言をきっかけに呼吸について調べ始めると、一冊の本に出会う。
そこには、自律神経と呼吸の関係や、自分が長年感じてきた不調につながる内容が書かれていた。
確かに、疲れやすく、首や肩はこりやすい。
かつて、心臓胃腸の不調から病院で検査を受けたけど、異常はなかった。
「本を読んで全部つながった気がしたんです。」
その言葉には、長年抱えてきた疑問が解けた安堵感がにじんでいた。
さらに学びを深め、呼吸筋ストレッチを続ける中で、自身の体にも変化が現れる。
以前はマッサージへ行くたびに「力を抜いてくださいね」と言われていたほど体が緊張していたが、少しずつ自然に力が抜けるようになった。
首や肩のこりも和らぎ、疲れても以前ほど引きずらなくなったという。
「若い頃より今の方が元気なんです。」
そう笑う林田さんの表情からは、自身が体験した変化への確かな実感が伝わってきた。
この経験を自分だけのものにしておくのはもったいない。
そんな思いからNPO法人安らぎ呼吸プロジェクト 認定指導士となり、現在は自治体やカルチャーセンター、イベント、オンラインなどで呼吸筋ストレッチを伝えている。
頑張るより、緩めることを届けたい

話を聞いていて印象的だったのは、「頑張る」という言葉がほとんど出てこなかったことだ。
代わりに何度も耳にしたのは、「緩める」「戻る」「揺れ幅を小さくする」という言葉だった。
「今はストレスが本当に多い時代なんです。」
スマートフォンを開けば情報は次々に流れ込み、気候の変化も激しい。
人間関係や仕事など、自分では変えられないことも多い。
そんな毎日の中で、人は無意識のうちに体へ力を入れ、呼吸も浅くなってしまうという。
その状態を林田さんは、「鎧を着たまま生活しているようなもの」と表現する。
本当は戦う必要のない場面でも、体だけがずっと緊張している。
だから疲れが抜けず、不調も長引いてしまう。
「鎧を脱ぐ時間があってもいいと思うんです。」
その時間をつくる方法の一つが、呼吸筋ストレッチだ。
今回、NHK文化センター神戸教室で開催される講座も、「夏を軽やかに過ごす呼吸習慣」がテーマになっている。
近年の夏は暑さが厳しく、夏バテや熱中症への不安を抱える人も多い。
「暑さそのものは変えられません。でも、疲れても回復しやすい体の土台は整えられると思うんです。」
その考え方は、講座の内容にも反映されている。
3回講座にしている理由は、「テキストを見なくても自然に体が動くようになるまで身につけてほしいから」。
知識を増やすだけではなく、日常の中で無理なく続けられることを大切にしている。
受講者からは、「自分の体のバロメーターになっています」という声も届いているそうだ。
今日は少し呼吸が浅い。
肩に力が入っている。
そんな小さな変化に気づけることが、自分を大切にする第一歩になるのかもしれない。
まとめ
インタビューが終わると、「最後に一緒にやってみましょう」と声をかけてもらい、呼吸筋ストレッチを体験させてもらった。
肩を上げ、ゆっくり息を吐く。腕を伸ばしながら深く呼吸を繰り返す。
ほんの数分だったが、取材前より肩の力が抜け、自然と呼吸も深くなっていることに気づいた。
「さっきより肩が開きましたね。」
そう笑う林田さんの表情を見て、この人が伝えたいものは、ストレッチそのものではないのだと感じた。
忙しい毎日の中で、自分を元の状態へ戻してあげること。
生きている限り、理不尽な出来事やストレスは避けられない。
それでも、不調や不安を長引かせない体を育てることはできる。
そんな考え方が、この呼吸筋ストレッチには込められている。
「最近疲れが抜けにくい」「夏を元気に過ごしたい」と感じている人は、一度体験してみると、新しい自分との付き合い方が見つかるかもしれない。
今回の講座は全3回だが、途中からの受講も可能。
1回目に参加できなかった人でも、2回目・3回目から学び始めることができる。
詳しくは、NHK文化センター神戸教室へ問い合わせてほしい。
頑張るより、少し緩める。
その積み重ねが、不調や不安を長引かせない毎日につながるのだろう。
※ 2026年6月29日現在の情報です。
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