【神戸】元町の路地裏で人と人をつなぐ店主の温かい挑戦!


【神戸】元町の路地裏で人と人をつなぐ店主の温かい挑戦!

「実は私、鉄板焼きの料理があまり好きじゃないんです」とお好み焼きや鉄板焼きを提供するお店の店主から突然その一言が飛び出し、私は思わず目の前で聞き返してしまいました。

けれどカウンター越しにじっくりとお話を聞き進めるほど、その言葉が決して冗談でも後ろ向きな気持ちから出たものでもないという事実が深く分かってくるのです。

店主にとって大切だったのは料理そのものを極めることではなく、この場所に長年流れていた愛おしい時間や、人と人が自然とつながっていく温かい空気を何よりも守りたいという純粋な想いでした。

その強いおもいが、かつて保育士として子どもたちと向き合っていた彼女の人生を大きく動かす劇的なきっかけとなったのです。

神戸・元町の賑やかな通りから一本入った路地裏にひっそりと佇む「路地裏鉄板酒場 はぶてる」は、もともとは叔父が大切に営んできた歴史あるお店でした。

叔父が店を閉めるという話を偶然耳にした時、「この大切な場所を街から絶対になくしてはいけない」と心が強く揺れ動き、その直感だけを信じて未経験から店を引き継ぐ決断を下したといいます。

料理人として名声を得たかったわけでもなく、鉄板焼きの技術に惚れ込んでいたわけでもありません。

ただ、大好きな人々が集まり、笑顔が溢れ、そこから新しい出会いが生まれていく美しい景色をこの場所に残したかったのです。

そんな優しさと情熱から始まった、新しく生まれ変わった「はぶてる」のこれまでの歩みとこれからの物語を紐解いていきます。

学生時代のアルバイトで見た愛おしい景色を未来へ残したかった

【神戸】元町の路地裏で人と人をつなぐ店主の温かい挑戦!

店主はもともと保育士として幼児教育の現場で働いており、飲食業界とはまったく異なる世界で日々の生活を送っていました。

そんな彼女がこれまでのキャリアを捨ててお店を引き継ぐ決断ができた理由は、振り返ってみれば非常にシンプルで迷いのないものだったといいます。

「私の中にあったのは、叔父が作ったこの場所をどうしてもなくしたくなかったという強い気持ちだけでした」と語る通り、そこには熱い想いが宿っていました。

実は大学生の頃、このお店でアルバイトとして働いており、当時からカウンターには常連客同士の賑やかな笑い声が常に響き渡っていたのです。

初めてお店を訪れた一見客であってもいつの間にか隣の人と仲良くなり、ここで出会った縁がきっかけで今でもプライベートな交流が続いている人たちがいるほど、人と人が自然と結びつく奇跡的な空間でした。

そんな素敵な景色を特等席で見つめてきたからこそ、お店の歴史が途絶えてしまうという寂しい知らせをどうしても他人事のように見過ごすことができませんでした。

もちろん、一人のアルバイトとして働くことと、一企業の経営者としてお店を動かしていくことの間には、想像を超える大きなギャップが存在します。

食材の仕入れから日々の店舗経営、お金の管理にいたるまで全てが初めての連続であり、最初は右も左も分からない暗闇を突き進むような日々でした。

それでも「とりあえずやってみよう」という軽い気持ちではなく、「ここにある人のつながりを残したい」という揺るぎない使命感が、彼女の背中を優しく押し続けてくれたのです。

オープンから一年が経過した今、お店は少しずつ店主である彼女らしい色へと新しく変わり始めています。

以前からの常連客には「やっぱり昔ながらの鉄板で熱々のまま食べたいな」と言われたり、「前のお店の雰囲気が恋しい」と正直な寂しさを吐露されたりすることもありました。

けれどその一方で、新しくお店の扉を開けてくれたお客さんたちは「今のおばんざいがあるスタイルが本当に好き」と温かい言葉をかけてくれるのです。

今では来店するお客さんのほとんどが、彼女が新しくスタートさせてからお店の存在を知ってファンになってくれた人たちで埋め尽くされています。

彼女が必死に守りたかったのは過去の姿をそのまま硬直させて残すことではなく、この大切な場所でまた新しい時代に沿ったつながりが生まれていくことだったのでしょう。

「鉄板が苦手」だからこそ生まれた自分らしい優しい店づくり

【神戸】元町の路地裏で人と人をつなぐ店主の温かい挑戦!

取材を続けていく中で私が一番驚かされたのは、「実は鉄板料理というジャンルがそこまで得意ではない」という彼女の素直な告白でした。

詳しい理由を尋ねてみると、料理を作ること自体は昔から大好きなものの、鉄板を使った調理スタイルは自分の理想とは少し違っていたといいます。

ただ豪快に焼いてしまえば一瞬で完成する料理よりも、美しい盛り付けを工夫したり器との相性を考えたり、料理そのものの構成をじっくりと考える時間の方に心が惹かれるのです。

だからこそ今では店内の象徴である大きな鉄板にあえて蓋をし、手作りの美味しいおばんざいや魅力的な一品料理を充実させた「ちょい飲みバル」のような空間へと少しずつ変貌を遂げさせています。

現在のお店としての不動の人気メニューは、叔父の時代から受け継いだ伝統のホルモン炒めと、ふわふわ食感がたまらないとんぺい焼きです。

けれど「店主が心から推したいおすすめメニューは何ですか」と尋ねると、彼女は少し恥ずかしそうに笑いながら「チャーハンです」と答えてくれました。

自分自身がソース味よりも醤油味を心から愛しているからという、チャーミングな理由まで一緒に教えてくれたのです。

そんな一切の飾り気のない素直な答えの中に、彼女の人柄の本質がそのまま表れていると感じました。

料理を心から愛しているからこそ、自分が本当に美味しいと自信を持って誇れるものを大切な目の前のお客さんにお勧めしたいのです。

そんな誠実なキャラクターが滲み出るこのお店ですが、彼女にとってここはまだ夢を叶えるための通過点にすぎません。

将来的には自分の理想を詰め込んだ素敵なカフェを開きたいという、次なる大きな目標を笑顔で語ってくれました。

昼は美味しいランチを提供し、午後はこだわりのコーヒーと手作りケーキを楽しめるカフェとして、そして夜には心地よいジャズが流れる大人のバーへと姿を変える空間です。

さらにこれまで保育士として命と向き合ってきた貴重な経験を生かし、子育てに奮闘中のお母さんたちが孤立せずに気軽に集まり、日々の悩みを打ち明け合える救いの場所も併設したいといいます。

飲食店という枠組みでありながら、そこに集まる人々の人生を優しく支えるための止まり木のような場所。

現在の「はぶてる」の運営にも、そしてこれから彼女が目指していく未来のカフェの構想にも共通しているのは、「温かい人が集まる場所を自分の手でつくる」というブレないおもいでした。

まとめ

すべての話をじっくりと聞き終えた頃には、「鉄板焼きがあまり好きではない鉄板探訪の店主」という最初に抱いた不思議な違和感はすっかり胸の中から消え去っていました。

この人が本当に愛しているのは特定の料理のジャンルや技術ではなく、そこに人が集まって笑い、人と人が優しくつながっていく空間そのものだったのです。

だからこそ彼女は保育士という安定した世界から飲食業界という未知の荒波へと飛び込み、今も毎日の新しい挑戦を笑顔で楽しんでいます。

そして次に彼女が見据えている未来は、孤独を感じやすい子育て世代の親たちを心の底から支えていくための福祉と融合した温かいカフェの設立です。

きっと新しく生まれるその場所でも、提供される美味しい料理以上に、そこに流れる「圧倒的な居心地の良さ」が彼女を象徴する一番の魅力になるに違いありません。

神戸・元町の静かな路地裏で勇気を出してその扉を開けると、初めて訪れた場所のはずなのに誰もが自然と笑顔で会話を始めてしまいます。

そんな奇跡のような空気を毎日大切に育てている「路地裏鉄板酒場 はぶてる」は、ただお腹を満たしてくれるだけでなく、日々の生活に疲れた心に人との温かいお土産まで持たせてくれる素敵な場所でした。

2026年6月30日現在の情報です。

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